NEWS

2023.10.16

ブログ

ワクチンという言葉

 インフルエンザのワクチン接種が始まる時期になりました。特に高齢者や受験生は、接種時期に気を使うことになります。

 さて天然痘は、人類が根絶した感染症です。罹患すると死亡率は20〜40%で、全身が膿疱に覆われる恐ろしい病気でした。イギリスのジェンナー(1749-1823)はその治療に、天然痘に罹患した人から採取した人痘を接種していましたが、その成績は良くありませんでした。彼はある時、牛痘に罹ったことのある乳搾りたちが、ヒトの天然痘の接種に何の反応も示さなかったことから、牛痘の感染が天然痘の抵抗力を作ると推理し、1796年に少年への牛痘接種に踏み切ったのでした。

 ジェンナーはこの事実を記載した本を出版し、その中でバリオレ・ワクチンという言葉を使いました。ラテン語でバリオレvariolaeは天然痘のことで、ワクチンvaccinaeは雌ウシのことです。つまり、牛痘を「ウシの天然痘」と考えたわけです。こうして牛痘接種は、徐々に世界中に広まっていきました。

 パスツールは1881年の国際医学会で、ジェンナーの功績を記念してワクチンという言葉を予防接種全般に用いようと提案しました。こうして現在のワクチンという使われ方になっているのですが、これにより本来のウシという意味はどこかへ行ってしまうことになりました。

一覧を見る