2022.08.16
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昔は海水での沐浴は潮湯治(しおとうじ)と呼ばれていて、夏に海で泳ぐと風邪をひかないと言われました。
海水浴という語を初めて用いたのは、初代の陸軍軍医総監の松本良順(1832-1907)でした。彼はオランダ軍医と協力し、長崎に本格的な西洋医学校と病院を創設した人です。松本は長崎への留学中に、外国書物に書かれていた海水での健康増進効果を知り、四方が海の日本には海水浴に適した海岸があるのではないかと考えました。そして1884(明治17)年に神奈川県の大磯の海岸を散策して、この地が求めていた場所であることを確信したのでした。
その理由は、砂場が広く清潔である、川水が海に注がないため海水の塩分が多い、海岸に砂利や岩石が少ない、潮の満ち引きが大きく変化を楽しむことができる、というものでした。そして将来は、東京からの交通手段の発達により多いに栄えるだろうと述べて、地元の有力者から経済的協力をとりつけて、1885(明治18)年に海水浴場を開きました。
日本で最初の海水浴場は、愛知県知多半島の大野海岸に設けられたものとされていますが、大磯には大規模な旅館が開業したため、当時としては最も繁栄した海水浴場となりました。海水浴の始まりは、健康作りのためだったのです。